皆さんこんにちは!櫻FP事務所です。
ところで
相続の相談です。
父が5ヶ月前に亡くなりました。相続人は私(次男)と兄(長男)です。
自筆証書遺言には、「財産の全てを長男に譲る」と書いてありました。
父は生前、兄(長男)と同居していました。
相続財産は自宅の土地3400万円です。(自宅の建物は兄が所有者です。)
債務はありません。
私(次男)には遺留分があると思います。
不動産(土地)にも遺留分侵害請求はできますか?
また父が死亡してからすでに5か月経過しており、いつまでに請求を行えばいいですか?
とお困りの方に
2019年の民法条文改正により、遺留分は金銭債権になりました。
相続財産が不動産(土地)などの現物の場合も、遺留分はお金で支払う事を請求することができます。
遺留分は、法定相続人(兄弟姉妹を除く)が最低限保障された相続財産です。
遺言書によっても遺留分の範囲の財産は侵害できません。
従ってご相談者の方は、財産を相続したお兄様に対して850万円の遺留分侵害額請求をすることが考えられます。
なお、遺留分侵害額請求権には以下の時効があります。
時効期間内に請求を行わないと、遺留分の権利は消えてしまいます。
この記事では、遺留分侵害請求権について、また請求方法や時効についてもう少し詳しくお伝えします。
是非参考になさってください。
なお、遺留分権利者の相続財産に対する遺留分割合や計算式などについては、以下の記事をご参照ください。
遺留分とは?兄弟姉妹外の相続人が最低限保障済の財産!割合や計算式は
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遺留分侵害額請求権条文改正不動産も金銭支払可能に!請求方法や時効は
遺留分侵害額請求権条文改正不動産も金銭支払可能に!
2019年の民法条文改正により、遺留分は金銭債権になりました。
相続財産が不動産(土地)などの現物の場合も、遺留分はお金で支払う事を請求することができます。
遺留分は、(法定相続人(兄弟姉妹を除く)が最低限保障された相続財産です。
被相続人の生前の贈与又は遺贈、そして遺言書によっても遺留分の範囲の財産は侵害することはできません。
故人の遺言書に「3400万円の自宅の土地全てを長男に譲る」と書かれており、相続人は子供二人(長男と次男)だったとします。
遺留分権利者である次男(遺留分割合4分の1)は遺留分侵害額を請求することが考えられます。
条文改正前は、相続財産が不動産などの現物の場合、遺留分権利者と財産を相続した人との「共有状態」となるとされていました。
しかし共有状態となった不動産は、その後の売却などで財産を相続した人と遺留分権利者との話し合いがつかず、調停にもちこまれることが多々ありました。
2019年の条文改正で、遺留分は金銭で支払うこととされました。
不動産などの現物でも「共有状態」ではなく、財産を相続した人は遺留分権利者に対して、遺留分を金銭で支払うことになります。
2019年の民法条文改正により、遺留分は金銭債権になりました。
相続財産が不動産(土地)などの現物の場合も、遺留分はお金で支払う事を請求することができます。
遺留分侵害額の請求方法は?配達証明書付き内容証明郵便
遺留分権利者から遺留分を侵害している相手に対して遺留分侵害額を請求する方法は、特に規定はありません。
ただし証拠保全のため、配達証明書付き内容証明郵便を利用されることをお勧めします。
配達証明を付けることで相手に配達された日が証明できます。
また内容証明郵便は相手に送った内容の控えが郵便局で保存されます。
この二つの郵便システムを使うことで、いつどのような内容で遺留分侵害請求の通知をしたのかが、証明できることになります。
なお、遺留分侵害額請求の意思表示をする段階では、具体的な金額まで示す必要はなく、内容証明郵便は遺留分侵害額請求をする意思表示さえされていれば足りるとされています。
(遺留分権利者が把握していない相続財産もある可能性もあるため)
■内容証明郵便の記載例(参照)
内容証明郵便の書面タイトルは、単に「通知書」でも「遺留分侵害額請求書」でも結構です。
⓵公正証書遺言の場合
通知書
被相続人○○○○の公正証書遺言(○○法務局所属 公証人○○○○作成 平成○○年第○○〇号)
上記遺言の内容は私の遺留分を侵害しています。
従って、私は、貴殿に対し、遺留分侵害額の請求をします。
⓵自筆証書遺言の場合
通知書
被相続人○○○○の平成○○年〇月〇日付け自筆証書遺言の遺言内容は、私の遺留分を侵害しています。従って、私は、貴殿に対し、遺留分侵害額の請求をします。
■相手に配達証明書付き内容証明郵便を送った後
遺留分を侵害している受遺者や受贈者に、配達証明書付き内容証明郵便を送った後は、具体的な遺留分金額を話し合います。
話し合いがつけば、合意書を作成し、その合意書に従って遺留分を金銭で受け取ります。
もし相手が話し合いに応じなかったり、合意できなかった場合は、弁護士に交渉してもらうか、調停を行うことになります。
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遺留分侵害額の時効は?2つの時効期間
遺留分侵害額請求権には以下2つの時効があります。
この時効期間内に請求を行わないと、遺留分の権利は消えてしまいます。
⓵贈与または遺贈があったことを知ってから1年間
⓶相続が開始した時から10年間
⓵贈与または遺贈があったことを知ってから1年間
⓵贈与または遺贈があったことを知ってから1年間の起算点は、単に贈与や遺贈があったことを知るだけでなく、「自分の遺留分が侵害されて、遺留分侵害請求の対象となっていることを知った時」です。
「自分の遺留分が侵害されて、遺留分侵害請求の対象となっていることを知った時(ある程度、漠然と知った時という程度です)」から1年を過ぎると、遺留分を請求することはできません。
ただし、⓵贈与または遺贈があったことを知ってから1年間(消滅時効)には、遺留分の時効を止める方法(時効の中断)があります。
時効の中断で、進んでいた時効期間は振り出しに戻ります。
たとえば、「遺留分権利者が自分の遺留分が侵害されて、遺留分侵害請求の対象となっていることを知った時」から6か月後に、時効の中断がされると、それまでの6か月間の消滅時効の進行は無くなり、新たに1年間の消滅時効が進み始めます。
時効を中断させる際にはいくつかの方法があります。
そのひとつの方法である「催告」は、遺留分権利者から遺留分を侵害している相手に対して、遺留分侵害額を支払えと請求することです。
前述した配達証明書付き内容証明郵便を相手方に送ることは「催告」にあたり、消滅時効を中断することができます。
⓶相続が開始した時から10年間(除斥期間)
相続が開始した時から10年を経過した場合は、完全に遺留分侵害の請求をすることはできなくなります。
なお「相続が開始した時から10年」は除斥期間(法律関係を速やかに確定させるため、一定期間の経過によって権利を消滅させる制度)とされており、時効の中断はありません。
遺留分侵害請求権には2つの時効期間があります。
ただし、原則、故人が無くなってから1年の間に遺留分侵害請求を行うことをお勧めします。
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まとめ
・遺留分は法定相続人(兄弟姉妹以外)が最低限保障された相続財産です。
遺言書でも遺留分範囲の財産は侵害できません。
・2019年の民法条文改正で、遺留分は不動産等の現物も含めお金で支払うことになりました。
・遺留分侵害請求は配達証明書付き内容証明で通知することをお勧めします。
いつどのような内容で遺留分侵害請求の通知をしたのかを証明するためです。
・配達証明書付き内容証明郵便を相手に送ったら、その後、具体的な遺留分金額を話し合います。話し合いがつけば、合意書を作成し、その合意書に従って遺留分を金銭で受け取ります。
・相手方が話し合いに応じなかったり、合意ができなかった場合は弁護士に交渉を頼むか、調停を行うことになります。
・遺留分侵害額請求は以下2つの時効があります。
原則時効期間は1年と考え、早めに遺留分侵害請求をすることをお勧めします。
⓵贈与または遺贈があったことを知ってから1年間
・⓵の起算点は、 単に贈与や遺贈があったことを知るだけでなく、「自分の遺留分が侵害されて、遺留分侵害請求の対象となっていることを知った時」です。
・⓵贈与または遺贈があったことを知ってから1年間は時効の中断ができる
遺留分権利者から財産を相続した人に対して配達証明書付き内容証明を送ることは、【催告】にあたり、時効を中断(ストップ)することができます。
⓶相続が開始した時から10年間
除斥期間とされており、時効の中断はありません。
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